松本佳子 二ツ森護真二人展「えんぶりの根」

期間:2024.2.22-2.26

場所:八戸市美術館 企画:CONANBU 協賛:南部電機株式会社

東京写真月間2024後援の「SDGs 地域との共生」で共同展示する松本佳子さんが東京写真月間2022で東京で展示したえんぶりの写真が八戸市に戻って展示されるというので、会場でえんぶりが披露される24日に合わせて、現地を訪れた。

地元の写真家、二ツ森護真がハレの舞台をいわば正面から取り上げ、主に沿道での祭りの姿を示している。他方、松本佳子はえんぶりに参加する人々の準備段階や、踊り疲れた子供達が化粧のまま帰りのリヤカーで眠っている様子、広間で準備をする女性たちなども撮影している。

2011年から東十日町に溶け込んで、その町のえんぶりをずっと撮っている。何とえんぶり組のメンバーにもなっている。特に印象に残っているのは祭りの初めの夜に焚き火の煙を背景にした大人たちの後ろ姿、今回新しく追加した、青空と雲を背景とした丘の田での踊りの姿を撮った写真だ。これは作者の頼みを聞いてメンバーが寒い中を舞ったものという。田植えの豊穣を願う舞の本来の場所での舞の振り付けに作者のえんぶりに対する深い理解が見える。

会場でのトークショーと外でのえんぶりの舞の披露には、実に多数(およそ100人ほど)の観客が集まった。文字通り「地域との共生」を実現した写真展だ。会場で、作者やお友達の記念写真を撮影させてもらった。         

<画廊企画> 創形美術学校版画専攻グループ展『瞬刻』

期間:2024.2.12-18

場所:O・ギャラリー 銀座1−4−9第一田村ビル3F

卒業を前にした若い作家による展示。銅版画や石版画。日本人に混ざって、中国からの留学生がいたのが印象的だ。中国では旧来の版画で、新しい現代的な版画ができないから留学しているとのこと。親がかりではある。5人のうち2人が留学生だが、版画内容には、個人差しか感じられない。

香川美穂 写真展「PENGUIN LIFE ーペンギンおやこのときー」

場所:新宿ニコンサロン

期間:2023.7.18−7.31

エンペラーペンギン、キングペンギン、ロイヤルペンギンなど10種類ものペンギンの家族、特に子育ての様子や、羽の生え変わり、餌を待つ子供たちの保育園のように一箇所に集まって餌を待つ様子、子供に水際まで走らせて、脚力をつけさせる様子などを、愛情を持って、「この子」達を撮影している。これだけの量と種類のペンギンの様子を撮影するためには何度も南極や亜南極に行かなければならない。家族に会いに行くような感じで撮影に赴いている様子が映し出されている。

また、プリントは阿波和紙にプリントされていて、色が鮮やかで、かつ、和紙の温もりを感じさせるものになっている。阿波和紙も数種類(白から黄色まで)あり、絵柄によって使い分けている。60cm幅の大きな和紙は手漉きだとのこと。

撮影にも快く応じてくれた。

小澤あい Celestial Light 〜神々の光〜

期間:2023.5.30-6.12
場所;Roonee 247 Fine Arts

普段はポートレートを出張で撮っている、カメラマンだが、この初個展では、神社仏閣の神木などを撮影したものをモノクロで
プリントして展示している。木を撮影しているので、縦位置が多い。〆縄も入れて、神木であることを明示し、「神々の光」を写そうとしている。

この作家はJPSに2015年に入賞したときの同期生でもある。

会場には、多くの花が飾られ、また、知り合いの観客も多い。

作家は在廊し、丁寧に説明も、撮影にも協力してくれた。

展示作品をまとめた写真集(Roonee 247 fine arts製)も販売されている。

柳澤ユカ写真展 ABSURD

 

期間 2022.10.10-16

場所:Place M (新宿)

友達らしいMが『不条理な世界は生きるに値しない』と言って、先手を打った、というステートメントから、本人もこの世の不条理を身近に感じているようで、そんな哲学的な疑問を胸に、インドで死と生が共存する姿を写真に収めている。出家したての髪を剃った裸の男達の写真や、その後は髪を伸ばし放題の長老の眼光鋭い写真、川辺のテント村、子沢山の母親と子供の写真など。冒頭の写真は川辺の石の上で、死体を薪に挟んで焼いている写真だ。そばで牛が死体の焼き残りの餌を待っている。全てモノクロ写真だ。藤原新也の「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」を確かめに何度(7回)もインドに通っているようでもある。

本人は快く、撮影に応じてくれた。

大門美奈・大門正明写真展「Bright Britain」

期間:2022.9.14-24, 11:00-18:30
場所: CO-CO・PHOTO SALON 銀座3丁目11-14 ルート銀座ビル 4F
                     TEL:03-3542-7110

2011年のデビュー以来、11年目となる夫婦による2人展。
2人とも六甲のフォトレビュー以来の知人だ。

作者の知人の結婚式に参加するためにロンドンに赴き、ついでに長逗留して、ロンドンや近辺の地域を2人で訪ねて、撮った写真が並んでいる。

ロンドンといえば、観光客が多い、混んだ風景が想像されるが、展示されて居るのは、人気の少ない場所での通行人の風情、子供に仕草、バスの車内の様子、石の建物の風情、など、まるで、地方都市の風情のようにも見える。

2人展だが、写真に作者氏名やタイトルは示されていない。視点もプリントのトーンも一人の作家の作品と言っても、誰も疑いを持たないくらい、統一されている。仲の良い2人の息があっているという事なのだろう。

記念に2人の写真と偶々、居合わせたFUJIFILMの沖氏の写真を掲載します。

服部一人写真展 6×6 Portraits B&W +Color

期間:2022.8.28-9.5

場所:ギャラリーストークス 南青山6−2−10 T1ビル4F

作者は若い時から6x6の正方形で撮る写真に共感して、海外で、25年前から撮った写真から最近の写真まで、場所も、ケニヤ、ザンビア、インド、タイ、ミャンマー、キューバなどで、撮りためたポートレートを並べている。子供たちの写真が多く、子供たちの素直で嬉しそうな表情が、フィルムの柔らかな感触で捉えられている。

この画廊での個展はすでに5回目で、過去のポートフォリオもファイルでまとめられていて、見ることができる。今回と前回の「初めての旅」のブックレットも販売している。たまたま、ゼミの卒業生で馬の写真を撮っている女性と一緒になったので、記念写真。

東京写真月間「地域との共生」浅野久男「”Kai”を探して。A Journey to Find “Kai” in Hokkaido」                 太田昭生「豊島30年”産廃からアートへ”」

場所:エプサイトスクエア丸の内 エプサイトギャラリー

期間:2022.5.27-6.8

2つの写真展が同じ会場を2分して開かれている。

浅野久男「”Kai”を探して。A Journey to Find “Kai” in Hokkaido」

作家は札幌在住だか、旅する写真家として北海道の各地を訪れて、各地の写真を撮っている。“Kai” とはアイヌ語で「この土地に生まれたもの」という意味で、松本幸四郎が「北海道」の命名の基になった言葉でもある。

そこに見えてきたものは、絶景とされる美瑛の風景などとは違う、衰退し、寂れた農村や町の風景である。札幌など限られた所以外の過疎化の現状が映し出されている。夕張の寂れた姿は特に作家の情感に訴えるものであるようでもある。

太田昭生「豊島30年”産廃からアートへ”』

作家は小豆島在住で、同じ瀬戸内海で産廃の島として有名になった豊島が産廃のゴミ溜めの島からアートの島に変身する過程を、1990年から2010年までの30年の定点観測によって島が変貌していった様子を写真に収めている。

過去はモノクロで、2010年はカラーで印刷することで、違いを際立たせてもいる。しかし、ここでも廃屋は廃屋のままで、過疎はここでも進行が止んでいないことも示されている。しかし、ここでは子供たちを含めた祭りの情景も示され、中でもケネディ駐日大使がお忍びで豊島の美術館を訪れた時に祭りと遭遇して、撮った記念のカラー写真が色を添えている。

亀山仁写真展「ミャンマーの人々と戦果の記憶」

期間:2022.5.5-11

場所:ポートレートギャラリー

作者はすでにミャンマーの人々や風景の写真を冬晴ギャラリーなどで発表し、写真集も出版している。

ミャンマーの子供たちの写真は外国人が撮る写真に関心があり、撮ってもらいたがる愛嬌がある、いわば、我々にとっては懐かしい子供たちの表情を写している。

今回は子供たちの写真もあるが、とても年配の彫りの深い人々の写真が展示されている。その人たちは戦時中のインパール作戦の頃に日本兵と関係した人々で、その頃の日本兵の慰霊祭を欠かさず行っている人だったりする。作者はミュンマーに日本兵が残した行跡を辿って、日本との関係を掘り下げようとしている。現代の日本と2021年にクーデターを起こした軍隊との関係にも立ち入ろうとしている。ミャンマーの人々の生活のあり方にも影響を及ぼす、政治にも関心を深めていると言えよう。

風景写真もインパール作戦の場所であったなどの詳しい説明がついていて、教えられることも多い。

本田光 写真展「うきま」

期間:2022_4.28-5.11

場所:エプソンスクエア丸の内 エプサイトギャラリー

第2回 epSITE Gallery Award 受賞

タイトルの「うきま」は作者と妻が住んだ「浮間」地区の風景モノクロの風景写真と所々に妻の日常での写真が入っている。

写真は8×10、4x5などの大型カメラで丁寧に撮影。台所の妻の正面からの写真はレンズの写りが良い。良いレンズを借りて撮ったとのこと。

2人の生活の様子がステイトメントに記されているが、喧嘩をした後の妻の言葉が引用されている。

「あなたはまだ、本当に大事なものを失ったことがないのよ。」

なんか自分にも当てはまりそうで、びくりとする。

作者はシナリオライターで、物語の筋書きには慣れているのだろうが、妻との日常生活の記録を10年に亘って、撮り続ける姿勢は写真家として重要な要素なのだろう。

また、それに応じて、撮らせ続けてきた妻はいわば、ゆっくりとこの写真家を育ててきたとも言える気がする。

私は六甲山フォトレビューやワークショップで作者と知り合い、また彼の妻とも出会って、優れた写真家でもある妻の薫陶も受けている。

曰く、「ポートレイトを撮るときには相手の腕に触ると良い。」と。